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秘書は残業代をもらえない?

管理職にある者に対しては残業代の支払義務がないというのは労務管理に携わる方であれば、当然に知っている知識です。

これは労働基準法41条の規定に根拠が求められます。

 労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者について は適用しない。
 1号 (省略)
 2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者

「第六章・・・・に関する規定」には、時間外労働や休日労働の割増賃金に関する規定を含みますので、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理職にある者)には残業代や休日労働手当を支払わなくて良いということになります。

ここで、少し勘のいい方であれば、「機密の事務を取り扱う者」も同じ扱いになっているので、秘書に対しても残業代を支払わなくてもいいのか?と疑問に思うはずです。

この点、旧労働省の通達によれば、「機密の事務を取り扱う者」とは、「秘書その他職務が経営者又は監督もしくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者」と解されており(昭和22年9月13日発基17号)、これに従えば「秘書」であれば一般的に「機密の事務を取り扱う者」と言えるようにも読めます。

実際に、「秘書」であれば全て残業代支給の対象外となるような解説をしている参考書もありますし、インターネット上の記事を見てもそのような解説は多いです。

しかしながら、裁判実務上は、やや異なる解釈が採用されているようです。

大阪高等裁判所平成元年2月21日判決は「同法四一条二号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」又は「機密の事務を取り扱う者」とは、その名称にとらわれず、勤務の具体的態様に照らして、経営者と一体的な立場にある者であるか否か、労務管理上監督的地位にあるか否か、出社退社等について厳格な制限を受けていたか否か等を実質的に判断して決定されるべきものである」とは判示し、管理職と秘書を厳格に区別せずに両者を一体的にとらえています。

また、東京地方裁判所平成16年3月29日判決は、単に秘書としての業務を行っているだけでは「機密の事務を取り扱う者」とは言えないと判示し、その範囲をかなり厳格に解しています。

両判決のアプローチの仕方は異なりますが、いずれにしても、判例が「秘密の事務を取り扱う者」の範囲をかなり厳格に解していることは明らかですから、一般的にイメージされる秘書が全て残業代支給の対象外になると考えるのは誤りでしょう。

秘書と呼ばれる方々の範囲も様々であり書類・スケジュール管理だけを担当している方までが残業代をもらえないというのは不公平でもあり、上記の判例の考え方もこのような感覚に基づく判断だと考えられます。

もし、貴社が秘書の残業代を一律に不支給としているのであれば、そのリスクについても再度分析する必要があるでしょう。

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