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強行法規と抵触する条項の取扱い

契約の内容は当事者間で合意さえるれば、どのような内容にしようとも自由であるのが大原則です(契約自由の原則、私的自治の原則)。しかしながら、少しでも契約実務に携わったことのある方であれば、この原則は建前にすぎず、実際には制約を受けることが多いことを知っているはずです。

これから契約実務に携わる方もいらっしゃるでしょうから、念のために簡単に説明をしておくと、取引に関するルールを定めた法令は、以下の2つに大別でき、契約条項と抵触する場合の効果が全く異なるということになります。

 ①任意規定 当事者間で合意がない事項に関する紛争が生じた場合に、補充的に適用される条項。任意規定に抵触する
       契約条項は任意規定に優先し有効。
       たとえば、賃料の支払時期に関して規定する民法613条は、建物の賃料は毎月末に支払うべきことを規
       定していますが、この規定は任意規定と解されているため、当事者間の契約により前月25日払いとする
       こともできますし、翌月末払いとすることもできます。当事者間の契約上、賃料の支払時期に関する合意
       が定められなかった場合には、この規定が補充的に適用され、賃料は毎月末日払いとなるにすぎません。

 ②強行法規 当事者間の合意に優先して適用される条項。強行法規に抵触する契約条項は無効。
       たとえば、民法146条は、時効の利益はあらかじめ放棄することができないことを規定していますが、
       この規定は強行法規と解されていますので、契約書において、消滅時効の援用権を放棄する合意をしても、
       その効力は認められないことになります。
       下請法、労働法、消費者契約法、特定商取引法、割販法等の分野では強行法規が多く存在します。

個々の法令の規定が任意規定になるか強行法規になるかは契約実務上も大きな問題となりますが、任意規定になるか強行法規になるかは解釈により個別に決定されるため、質の髙い契約書を作成するためには、任意規定・強行法規に関する広範な法知識やリサーチ能力が必要になるのはもちろん、高いレベルの法解釈技術を備えておくことも不可欠となります。

では、契約書をレビューしているときに、強行法規に反する条項が含まれてることに気付いた場合には、どう処理をすべきなのでしょうか。

まず、第1に考える対応方法は条項の削除となります。

契約書に盛り込んでも効力が生じないのであれば記載する意味もないですし、後々あらぬ誤解が生じるのを避けるためにも、強行法規違反の規定は削除してしまうというのは最も素直な考え方です。特に、当該条項が、貴社に不利な条項である場合には当然削除してくべきですし、不利でも有利でもない規定であっても、誤解を避けるため削除しておくことが望ましいでしょう。

では、強行法規違反であることが判明したが、貴社としては、できれば残しておきたい条項である場合にはどう対応すべきでしょうか?

この場合には、原案の実質的な意味を維持しつつ強行法規違反とならないように条項を修正できないか工夫をしてみることを最初に検討すべきですが、うまくいかないことが多いでしょう。そこで、実際には、強行法規に違反するかどうかはっきりしないグレーゾーンで条項を修正するということも検討すべきでしょう。

この場合、条項が無効になるかは最終的には裁判で決着をつけることになるので、契約締結時にはリスクを確実に認識することはできません。貴社としては、最悪の場合、条項が無効になるリスクがあることを認識して(それでも構わないという前提で)取引をなすことが必要です。もっとも、規制法分野の法令に抵触するか否かは、原則として、条文の文言から形式的に解釈されるので、グレーゾーンの条項がむやみに無効にされることは決して多くはないということは言えます。

では、明らかに強行法規に抵触すると知りつつ、そのまま記載するという対応はありえないのでしょうか?

結論から言えば、そのような対応をとる場合もあっていいと言えます。

通常、強行法規違反の契約条項を盛り込むこと自体には罰則はないため(例外はあります)、このような対応をとっても貴社に直接的な不利益が生じることはありません。

また、この場合、当該条項に関する紛争について訴訟になれば貴社はほぼ確実に敗訴することになるため、貴社は、この点を十分に認識して取引をなすことが必要でが、実際には無効になる条項であっても、契約の相手方が無効になることを認識できないこともしばしばあります。契約の相手方が当該条項を有効と考えているのであれば、少なくとも訴訟前の和解交渉段階では、有利な交渉を進めることは可能ですから、明らかに無効となる条項でも規定しておくことは全く意味のないことではありません。

もちろん、無効であると認識しつつ契約条項に盛り込むという対応は、相手方との信頼関係や企業としての品格の問題がありますし、極端な場合には詐欺罪や不当利得等の等の問題が少じることもありえますから、慎重に検討する必要はあります。

しかしながら、シビアなビジネス交渉の場面では、無効となる条項であってもあえて規定しておくということは一般的に行われており、一つの有効な戦略になりうることは認識しておくべきです。

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